リジェネフォーティ―株式会社 代表取締役

中西 徹

Toru Nakanishi

忘己利他/人の役に立ってなんぼ

中西 徹

略歴

東京大学理学部卒業。農学研究科で農学博士取得。
阪大、京大の研究所、岡大を経て現、就実大学大学院医療薬学研究科教授。
フランス・パスツール研究所での研究経験を持ち、現在、日本パスツール財団会員。
2021年、再生医療研究の成果を社会で生かすために起業。リジェネフォーティ―株式会社代表取締役を務める。

現在の仕事についた経緯

小学生の頃からプラネタリウムに通い、理系の子供でした。近所の神社で見てもらったところ「この子は医者か科学者になる」と言われたとのこと。小学高学年の時、日本初のノーベル賞受賞者湯川秀樹氏の講演を間近で聞いて感動し、ノーベル賞科学者を夢見るようになりました。
1969年7月のアポロ11号の月面着陸に感動し、天文少年となって高校では天体物理学者を目指すも、大学入学後、数学の難しさに挫折し方向転換し、医学部の先生の分子生物学の講義に惹かれ生化学・分子生物学の道へ進みました。数々の困難もありましたが、優れた教育者でもある恩師たちにも恵まれて無事に学位を取得し、遠回りをしましたが30代で大学の研究者となりました。
大学では医療系の研究に従事し、幸運にも恵まれて、再生医療を中心とするその研究成果を社会で生かすことを目指し、現在に至ります。

仕事へのこだわり

研究のための研究は自分には向かないと常々思っていました。人の役に立つ、人を助けることが人生の目標でした。
まず若い時は研究者として腕を磨く、そして一人でできることは限られるので、他の企業や大学の人たちと連携していい研究チームを作る、そのためにはまず相手の利益を考えること、そこから大きな成果が生まれます。
成功のためには、我慢強く、粘り強く継続する、いわゆるやり抜く力(GRIT)が必要で、高いGRIT力を持つためには、まず強い動機付けを設定すること、そして前向き思考をすることが重要です。
また、いい意味で楽観的であることも必要です。いつもアンテナを張って、広い視野を持ち、大局から物事を考えること。また、研究は競争も多く時間との闘いなので、迷ったら前に進み決断に時間をかけないこと。
さらに、普通の研究を積み重ねても優れた研究にはならないので、初めから目標は高く設定するようにしています。研究は、アートと同じく未知の海に航海に出る如しなので、開けた心や豊かな感性、発想力が必須です。これを養うために、数多くの優れた芸術に接し、多くの人たちと出会って常に学び、引き出しを多く持つことが大切です。人との対話の中から新しい発想が出てきたり、自分の考えがまとまっていくこともあるので、誰かに議論を吹っかけてみることを心掛けています。
また、若者と仲間になって彼らを育てることも今の目標です。この不安定な時代に科学立国である日本を担って、海外の優秀な人材と渡り合えるような優れた人材を育てたいです。
日本の良さを理解し、語学力、専門的能力、幅広い教養と人間性、これら全てを備えた人材を育てていかなければ日本は沈没してしまいます。若者に負けないように自分も毎日勉強、一生勉強、そして精神と肉体の鍛錬をして、若々しいフレッシュな感性を保つこと、いい意味で自分に負荷をかけられる生産性の高い人間でいたいと思います。いつも宇宙のスケールを考え、その中の地球、その中の宇宙人の一人である我々人間の存在の稀有な価値を思わずにはいられません。

若者へのメッセージ

若いことはそれだけで財産です。
文学や哲学を学び、そして親族や先輩、先生、いろいろな人の人生をよく観察して、自分なりに納得と満足のいく人生を設計して送ってほしいです。
選択に迷ったらいろいろな人のアドバイスに耳を傾けることです。親のアドバイスは必ずしもベストではありません。しかし心底助けてくれるのは親だけです。
人生には大きな壁や困難が、一度でなく何回も現れますから、それを乗り越えるか迂回するかぶち壊すか、どれかで乗り切る覚悟を持ってください。そのパワーがあれば、何回失敗しても立ち直れるし人生はやり直せます。
こんなことを言うと今から人生に絶望しそうですが、人生の8割は大変なことで楽しいことはそんなに多くはないのです。それでも最後まで頑張るのが人生。しかし自分の楽しみを見出すことは大切です。楽しみでストレスを回避する方法を自分なりに確立しておくとよいです。その意味で、スポーツをする、或いは何か楽器が弾けるようにしておくとよいかもしれません。
あと大切なことは、語学の習得をすることです。日本は世界の中の日本としての存在感を高めていかなければなりません。そのためには若者の国際的な活躍が必須です。英語の4能力(読む書く話す聞く)を身につけることは当たり前と思って、それだけではなくさらにもう一つや二つの外国語の習得を目指すこと。それが、自身の活躍の場を広げて人生を豊かにもしてくれます。
そして、語学だけでなく海外の人たちと渡り合う素養と度量を身に付けることです。いい意味での日本人としてのアイデンティティを持ってください。