スウェーデンログハウス株式会社代表取締役

残間昭彦

Akihiko Zanma

家を造るとは物語を創ること

残間昭彦

略歴

1962年生まれ、新潟県出身。少年期から青年期を埼玉県に暮らす。
1983年、東京デザイナー学院インテリアデザイン科を卒業の後、室内装飾及び建築業関連の職につく。
1987年、独立起業して一般建設請負業の会社を設立。 1994年、ログハウスの輸入及び国内供給を手がける。
2001年、喧騒の巷を逃れ信州安曇野へ移住。 2005年、紀行エッセイ「白夜の風に漂う ─ ビジネスマンが歩いたスウェーデン ─」刊行。
2007年、平和エッセイ「八月の交響楽《シンフォニー》 ─ 忘れてはいけないことを忘れるために ─ 」刊行。
2020年、追悼エッセイ「ありがとうをもう一度」刊行

現在の仕事についた経緯

少年のころから室内装飾の仕事に憧れ、20代半ばで総合建設業を起業。以来、住宅建設一筋で道を歩んできました。よく波乱万丈の人生と言われますが、その意味では、蹉跌はあったもののひたすらに一本道を来ただけの私はそう言えるかどうか……。
今は、第二のステージである文筆業に勤しみつつ、ゆっくりと老来を迎える準備をしています。
建築も執筆も昔から好きな道ですから、分かれ道ではなく、二足の草鞋で一生いけたらいいですね。

仕事へのこだわり

安曇野へ来て間もないころ、友人の経営コンサルタントに「売上目標と営業方針は?」と尋ねられ、「そんなもん考えたことない」と答えました。すると彼は、「そんな、指針も向上心もないようでは経営者失格だぞ」と、叱りました。でも、その翌年の秋、「このあいだの夕方、君の家の屋根に立った煙突からプカプカと上がる煙を見ていたら、『あ〜 彼は金も何もないけど、このログハウスの中にはきっと暖かい幸せがあるんだなー』って思ったよ」と言い、一年前の私の言葉の意味が少しわかったような気がすると言ってくれました。

そんなものだから、しいて〝こだわり〟と言えば、「物語性」でしょうか。
考えてみれば、「昔、祖母が暮らしていた思い出の地に小さなログハウスを建てたい」とか、「今は亡き夫の夢だった北欧のログハウスで、紅茶と手づくりクッキーだけの喫茶店を開きたい」などと話してくださるお客さまはよくあり、私はそれに答える形で仕事をしてきたような気がしています。
だから、単に良い商品を……ではなく、住む人の〝物語〟に即した家づくりをしていきたいと思うるわけであり、人や自然や地球にとって有益であるかどうか、今ではなく未来にとって〝善〟なのかどうかを考えていきたいですね。

若者へのメッセージ

老子いわく、「叩くなかれ、されば常に扉は開かれる」
時機さえ整えば相手の方から扉を開けてくれます。それを持つことのできる人は決して争いません。誰とも、自分とも。
成功とは平和の異名のことです。

もう一つ老子の言葉を紹介しましょう……。
「あなたは貧しく愚かなままでいい。あなたは醜くいままが美しい。美とは醜に対立するものではなく、醜をも含むのが本当の美であるからだ。美しい花に鋭い刺があり、実を成す大樹の元に堅い根があるように、総てのものには存在する意味と理由がある……」
学歴・地位・名誉・経済力、そんな武器や鎧を捨てて裸の自分に還ることです。君には足りないものがあるのではなく、余分なものを身につけすぎているのですよ。

     世の人は 我を何とも
        言わば言え
     我が為すること 我のみぞ知る

                 坂本龍馬