株式会社PROPELa 代表取締役

山中 祐一郎

Yuichiro Yamanaka

滴を集めれば海となり 見聞を集めれば智恵となる

山中 祐一郎

略歴

1972年、栃木県小山市出身。
建築家・デザイナー。
内閣府 地方創生推進事務局 地域未来構想20オープンラボ 登録専門家。
東京造形大学卒業後に渡英し、Architectural AssociationでShin Egashiraに師事。アフリカ、ユーラシアの4つの大河を陸路で巡り、古代文明と現代辺境の放浪を通して、環境と人間との関係性について考察を深める。
帰国し内藤廣建築設計事務所に勤務後、1999年、S.O.Y.建築環境研究所を設立。
建築設計をベースとして、ランドスケープからプロダクトデザイン、アプリ開発まで、領域を超えてデザイン活動を展開。大学の教員や上場会社の顧問も兼務。Architizer A+Awards 2020の木造建築部門Popular voteで世界一位になる等、国際的評価を含む受賞多数。
2013年より「時間デザイン」の研究に着手し、2016年、株式会社PROPELaを設立。2019年、農業課題解決を掲げるビジネスコンクール DeepValley Agritech Award に時間デザインの観点から事業提案し、コンセプト部門最優秀賞を受賞。主催の深谷市から出資を受け、2021年より実証実験に取り組む。
また、経済産業省「地域・企業共生型ビジネス導入・創業推進事業」等にて対象自治体を拡大、発注の現場から地域の食と農を繋ぐ「地産Net」をサービス展開すべく活動中。

現在の仕事についた経緯

この世界は時間と空間で出来ています。
僕の本業は空間デザインを職能とする建築家ですが、時間デザインの観点からも何らかの社会提供価値を作れるのではないかと考え、農業のサポートに辿り着きました。
植物の種はタイムカプセルのように予め時間がプログラムされています。農家はその時間の種を畑という空間に播き、収穫をしているわけです。農業をそのように捉えるようになって以降、建築家である僕にも農業課題の解決に寄与することが出来るはずだと考えるようになりました。

仕事へのこだわり

若い頃から、答えのない問いに取り組むのが好きだったかもしれません。
美術大学へ進んだのも正解のない世界で生きる術を学ぶためでした。
海外留学ののち、設計事務所勤務を経て27歳で独立し、建築家として直接クライアントの課題解決に取り組んできましたが、やはりそこに正解などはなく、常に手探りのプロセスの中で(楽しみながらも)もがく日々です。
「Architecture」と云う言葉は明治期に「建築」と訳されましたが、僕にはその定義するところが狭すぎると感じます。英語の本来の意味では、何か理想があったり問題があったとき、それを解決しようとして取り組むプロセスの全体、あるいは取り組んだ結果見出された体系や姿をArchitectureと呼びます。
つまり必ずしも物理的工作物でなくコンピュータのプログラムなどであっても、組み上げたシステムをそう呼ぶわけです。だから日本語で言うならば、Architectureは「建築」よりむしろ「構築」に近い。とすると「プロセスの構築」こそが建築家の仕事と言えると思うのです。
この理解が僕の仕事のスタンスを決定づけています。問題解決の対象は建築や空間の中だけではなく、文化や経済、地域社会や国の仕組みを考えることまで領域を跨いで横断していくことになりました。
時間デザインから関わることになった農業界においては、高齢化、後継者不足、耕作放棄地増加、自給率低迷など課題が山積しており、建築家としてこの社会課題にどう向き合い、解決案を提示できるか、ということが現在の事業的チャレンジとなっています。

若者へのメッセージ

この世界には「一つの正しい答え」などありません。
だから、好きなことを思ったようにやるといい。人生にはさまざまな「正解の仕方」があると思うからです。
むしろ、選んだ答えを「正解にしていく」ことの方がずっと大切だし、実は社会でもその技術の方こそが求められています。自分が面白いとか幸せと感じることに素直に向き合い、その上で、それが社会の幸福にも繋がるものであるかを見極めて、それを事業に出来たならきっと充実した人生になるに違いありません。
さらに言えば、そのプロセスは大抵一人では成し得ません。どんな仕事であれ社会の中では共創的側面を持つでしょう。時に周囲に迷惑をかけることだってあるはずです。僕もたくさん身に覚えがあります。だから右手で好きなことをやるときは、左手には謙虚さと感謝の気持ちを手放さないでいることです。
そして何より、成功するまでしつこく諦めないこと。これを常に自分にも言い聞かせています。