ハイパーアグリ株式会社 代表取締役

冨永伸介

Shinsuke Tominaga

念ずれば叶う

冨永伸介

現在の仕事についた経緯

私は10年ほど前に、たまたま田舎で農業の現場を目にする機会があったのですが、農作業時に手作業で行っている様子に、自分の中の農業に対するイメージとのギャップを感じました。
雨が降る中、生産者の方にお話しを聞くと、「雨が降り、雷が鳴ると稲が多く育つ、今年は豊作だよ」とのこと。ほかにも稲妻と稲の関係性の話もお聞きしました。稲妻や稲光という言葉には「稲」という文字が使われています。ひょっとしたら関係があるのかもしれません。興味を持ち、自分で作った機器で田んぼに電気を流してみると、本当に稲が大きく生長しました。この出来事が私と農業が出会うきっかけとなりました。
その後、実際に農作物を作ってみると、稲だけではなくサニーレタスでも同様に生長が見られます。面白くなり知り合いの伝手から東京農業大学の先生をご紹介頂き、共同研究などもするようになりました。私はもともとシステムエンジニアをしていたのですが、努力の結果が全て自分が手掛ける会社のためだけにしかならないことに疑問を感じていました。最初は農業とシステムエンジニアを両立していましたが、正式に起業をしようと一念発起。次世代の農業を作り上げることを目標に、2011年ハイパーアグリ株式会社を設立いたしました。

仕事へのこだわりと目標

当社では、次世代型農業機械や栽培方法の研究・開発・販売を行っています。
現在力を入れているのは、水を電気分解して生成するイオン水を活用し収穫量増加や品質向上を目指す「フィールドマイスター」という製品。イオン水によって植物の生長抑制、あるいは生長促進が可能なのが特徴です。例えば田んぼで雑草の除去を行う場合には、田植え前に生長させ耕すことで取り除きます。ほかにもイオン水を与えるタイミングにより実や葉の生長を促すことも可能です。ただ、与える時期を間違えると種が発芽しないなど、マイナスに働く可能性もあります。ですから、品種や作柄との関係や生長過程と水を与えるタイミングについて大学の協力もいただきながら研究を行っています。また、イオン水を与える機器も改良を重ねています。現在ではIoTを活用し、各種環境センサーにより現場状況を把握・分析、例えば、温度や日照時間などを加味しながらイオン水の施用調節を行うシステムを構築、またソーラーパネルを設置しており、電源の供給も含め自動制御を行う仕組みを確立させています。稲作でイオン水を活用し、なおかつ自動制御も実現しているのは、世界でも当社だけです。

農業は「誰もがやりたがらない大変な仕事」というイメージがあります。
当社の目標の一つは、農業を若者が憧れる職業にすること、そしてひいては農業という産業を守ることです。現在当社では、大手企業さんとも組みながら、集落全体への導入を提案するなど各地で実証実験を行っています。ある程度成功事例があると、色々な場所でアピールしやすくなりますので、まずは時間をかけて実績を積み上げていくことが大切だと思っています。また、農業以外にも社会にはさまざまな問題があります。将来的に当社では、地方の高齢化や健康寿命といった、多くの人に共通する課題にも取り組んでいきたいと考えています。一つでも多くの解決策を世の中に提示し、人々が楽しく生活できるようサポートをしたいですね。

若者へのメッセージ

苦手だと思っていた食べ物が、実際に食べてみると美味しかった、という経験はないでしょうか。好きな物ばかり食べていては、こうしたことはまず起こりません。これは仕事においても同じです。自分がやりたいことをやるのもいいですが、逆に自分に合わない仕事を敢えてやってみるのもいいのではないでしょうか。今の時代は終身雇用制ではありませんし、若いのであればなおさらです。苦手だと感じていることに挑戦してみると、そこから学ぶこともあるでしょう。
また、自分が好きな仕事を探すのは意外と難しいものです。自分の好きな仕事が分からない場合には「自分が嫌いなものはなんだろうか」と自問してみてください。実際に働いてみるのもおススメです。嫌いな物を確実に知ることで、やりたい仕事の選択肢が絞れてくるからです。好きなことも、嫌いなこともはっきりしない場合や、まず何をしていいのかモヤモヤした気持ちを抱えている場合には、周囲と逆のことに目を向けてみましょう。周囲が行っていることの逆に真理が隠れている、という場合もあるからです。無理に皆と同じことする必要はない、と私は考えます。