株式会社ヒューマンアジャスト 代表取締役

根岸 靖

Yasushi Negishi

無限の可能性

根岸 靖

現在の仕事についた経緯

私は大学卒業後、有名なスポーツクラブを運営する企業に入り、そこから訳あって退職し、専門学校に通って柔道整復師の資格を取りました。そうした異色の経歴を持つ私から見れば、治療家の世界はずいぶんと異色で、理不尽なことが横行していると感じました。たとえば休日は一般企業では通常、週2日はあって、1日の労働時間は8時間というのが基本です。ところが同業界では、いまだ旧式な師弟関係に基づいた労働条件で働いている若い治療家が大勢いるのです。たとえばサービス残業は当り前で、師には絶対服従、多少無理な注文でもまったく文句なく受け入れるなどです。さらに若い治療家たちは、それ以外の世界を知らないからでしょうか。その旧態依然な業態に声を上げたりする人は皆無でした。
ですがもちろん、治療家といえども人間です。他人を施術する本人が不幸で不満を抱えていたのでは、心のこもったサービスはお客様に提供できません。「治療家の地位向上」。私が起業した動機には、真っ先にこれが挙げられます。

仕事へのこだわりと今後の目標

まず、治療家の人が安心して生涯働ける企業を目指しています。はじめに給料の点から述べますと、治療家の方はいまだに生活するのがギリギリの給料しかもらえず、しかもキャリアプランもなく将来の不安が払拭できない状況です。私はまず、同業界のこうした体質をなにより壊したいのです。
もっと具体的に述べますと、同業界に一般企業の論理を浸透させたいと願っています。そもそも若い治療家が求めるものは、「一生働ける会社に就職したい」という安定性です。よってそういう人が弊社にやって来ると、需要と供給の関係がマッチするので、高い仕事のパフォーマンスも期待できます。
弊社における業務形態を具体的に述べますと、シフト制を敷いています。無意味な休憩や残業を廃止することで、それを可能にしています。そうして共に働く方々には人並みの文化的な生活と、練習や研究などによる自己啓発を確保することで、能力向上に努めてもらっています。
これらのことは、われわれ経営陣と治療家たちの間で合意したかたちでの契約の範疇で、全て完結できるのです。

今後の目標としては、前述したように、弊社の目標は治療家の雇用における近代化を通じ、会社自体も大きくさせることです。さらに言えば、弊社の理念はむかしの近江商人が挙げた「三方よし」。これは「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」を意味します。
これを具体的には、どう経営に結びつけているのか?
まず、われわれ経営陣が治療家に健全な労働環境を提供しようとすれば、どうしても人件費が通常より高くなってしまいます。ですが、ここが弊社のビジネスの肝なのです。弊社が現在運営している治療院は32院ありますが、その3分の2はM&Aで手に入れたものです。つまり潰れそうだったり、後継者不足に悩んでいるような治療院をそのまま買い上げるのです。すると通常よりも、開業資金が圧倒的に安くてすみます。また残った従業員を雇用することも可能になります。
こうすることで軸はブレずに治療家を救い、さらに弊社の拡大も図れるということです。今後は接骨師協会のようなものをつくり、積極的に情報発信をしていこうと考えています。さらには新しい器具やスポーツドックなども導入し、お客様の健康維持やアスリートのコンディション調整にお役に立ちたいと思っています。

若者へのメッセージ

治療家を目指す若い人たちに申し上げたいのですが、これまでは治療院同士の競争が普通でした。ですが今後は、互いに患者さんを奪い合うのでなく、協力して業界を盛り上げる「共創」へと移行していく必要があります。
そうでなければ、業界自体が立ち行かなくなってしまう状況になってしまうでしょう。そして日本古来の治療法を活かす道は、数多くあります。たとえばドクターの手助けとなるようなサポート業務。または西洋医学では対応できない部分をカバーする等です。これにより日本の伝統医学を保存するとともに、多くの方々のお役に立てるはずです。もっともそのためには、中の組織をどう強くするか等の課題も残りますが、とにかく伝統医療をこれからの社会で役立てる方法はあるということです。
そのためにもぜひ、自分だけの正義を持ってください。私はサラリーマンを経てから治療家になり、その世界の時代錯誤を感じ、それを改善すべく、ここまでやってきました。まわりの同僚はみな、それに対して疑問を抱いてないにも関わらず、です。
みなさんも自分が正しいと思うことは、ぜひまわりからどう思われようが声を上げ、実行に移していただきたいと思います。