特定非営利活動法人アジア植林友好協会 代表理事

宮崎林司

Rinji Miyazaki

滴水難穿恒有万事成

宮崎林司

現在の仕事についた経緯

進路で悩んでいたとき、名前に「林」がついていることから、林業に興味を持ちました。
日本の国土の67%は森林なのですが、その割に林業ってあまりメジャーな業種ではない。それなら挑戦してみようと思ったのがきっかけです。
住友林業に入社してからは、木の伐採から植林、山の管理まで、あらゆる仕事をおこないました。途中で辞令が出てインドネシアに赴任したのですが、そこでの業務は簡単に言うと、森林伐採をして、得た木を日本に送ることでした。するとある日、我々が伐採した丸太の上にオランウータンがちょこんと座っていたんです。近づいてもなぜか逃げず、私の方をじっと見ているような感じで。
なんだか「お前たち人間は、こんなに自然破壊をしてどうするつもりなんだ?」と言われた気がしましたね。オランウータンは木の上を渡り歩き、果物や木の実などを食べて生活する動物です。彼らが歩き回ることで果物の種があちこちに落ちて次の芽が育つので、熱帯雨林の種の保全にも繋がっています。
そんなことを知ると「人間のしていることって一体なんなんだろう?」と考えずにはいられませんでした。東京へ戻った後もその考えは消えず、結局42歳で退職し、ビーボコーポレーションの設立に至りました。
しかし植林という事業は、経済となかなかリンクしないんですね。それで寄付金を原資として活動を広げようとNPO法人「アジア植林友好協会」も2002年に立ち上げました。

仕事へのこだわりと目標

一つは、やはり現場を知ることが大切だと思います。
現場をよく認識して、次にどうすべきかということを常に考えて行動することですね。
もう一つは、人間は自然を超えられないということです。
自然を利用しようだとか、コントロールしようなんてことはみんな間違いですね。弊社のコンセプトは「自然と健康」ですが、人間は健康に生きるためにも、自然に従って生きるのが一番だと思います。

今後の目標としては、モリンガの植林を広げていきたいですね。
私はこれまで累計120万本ほどの植林を行ってきましたが、CO2削減の面だけで考えると、大きな貢献には繋がらないんですよ。それで悩んでいた時に出会ったのが、モリンガという種類の木です。
この木の特徴は、成長スピードが一般広葉樹の20倍早いこと、それからCO2吸収率がスギの50倍高いことです。また栄養価も非常に高いので、スーパーフードとも言われています。
私はモリンガを100億本植えれば、貧困と気候変動どちらの問題にも対応できると考えています。100億本と聞くと気が遠くなるかもしれませんが、要は世界中で1人が2本ずつ植えれば良いんですよ。
今はネット社会ですし、人の繋がりを利用して10年くらいかければなんとかなると信じています。

若者へのメッセージ

「自分だけ」「今だけ」「お金だけ」という価値観を捨てて、本来の人間としてどうあるべきかということを考えながら行動して頂きたいと思います。切った木は誰かが植えないと育ちません。放っておけば、次世代の人が生き続けられないという事態にもなりかねるわけです。
社会は経済成長ばかり謳いますが、私は経済成長よりも循環社会を目指すことだと思いますね。
人は一人では生きられませんが、繋がりがあれば生きられます。
人間は他社と繋がるために、しいては社会を良くするために生きているということを、どうか忘れずに頂きたいと思います。