株式会社イノバステラ 代表取締役社長

栗山和巳

Kazumi Kuriyama

GO for IT!

栗山和巳

略歴

大阪大学大学院修了後、パイオニア株式会社に入社。音響研究所に勤務、翌年より同社技術研究所で本格化したレーザーディスクの研究開発に従事し以降光ディスクの開発に携わる。
1989年より6年間光ディスク製造の米国子会社で技術担当を務め、帰国後光技術センター所長などを経て執行役員総合研究所次長を務め、さらに執行役員法務・知的財産部部長となる。在任中、2008年にプラズマディスプレイパネル技術についてSamsung SDIを相手取り米国テキサス東部地区連邦裁判所にて特許訴訟を指揮し完全勝訴の評決を得た。
2005年に量子ドットデバイスの実用化を目指し、パイオニアをスピンアウトして仲間と株式会社イノバステラを設立、今日に至る。
NEDO TCP審査員特別賞、NICTデバイスワークショップ優秀賞、文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム「秀でた利用成果」最優秀賞などを受賞。

現在の仕事についた経緯

オーディオの趣味が高じて入社することになった前の会社ですが、入社後当時まだ研究段階にあった絵の出るレコードと言われたレーザーディスクのチームに異動してディスクを量産する際に必要な原盤を作るマスタリングマシンの開発チームに加わり、それ以降光技術や微細加工技術に向き合うことになり、現在取り組んでいるナノフォトニクス技術の基礎を獲得しました。
リーディングカンパニーであり続けるためにはまだ誰も取り組んだことに無い技術を発見して実用化する必要があり、ここで失敗を恐れない取り組み方を学びました。
また、いくつかの候補となる技術から「スジの良い」技術を見分けることも重要です。さらにスピンアウトする前には法務・知的財産の担当となり、自らが産み育てた資産を守る術を手に入れました。これらが現在の仕事に非常に役立っています。

仕事へのこだわり

私がキャリアを通じてこだわったのは「人と同じことをしない」という点です。
あることを達成するにはさまざまなアプローチがあると思いますが、その中でも英語でいう所の「スマートな」解決法を選んできたように思います。求められる成果に対して必要なものは何かを徹底的に想定・調査して無駄なものは極限までそぎ落とし単純化します。そうしたのちにそれを最も簡単に実現する方法をとります。こうすることで、設計から試作、トラブルシューティングやそれを実際に使う人の習熟にかかる時間を大幅に節約でき、大きなコストダウンにつながります。また単純なものは故障も少なく手がかかりません。このようなことを継続するためには新しい技術の動向を常にウオッチしていくことが大切です。
以前はあきらめざるを得なかったことがこんなもので簡単に実現できるようになった、あるいは分野は違うけれどこんな技術で実現できるのではないか、などは実例を挙げればきりがないほど経験してきました。
もう一つ心がけていることは「時間がかかる面倒なものほどすぐに手を付ける」ことです。自らがコントロールできないあるいは避けて通ることが出来ない要因でどうしても時間がかかることはたくさんあります。そしてそれらは面倒なことが多いものですが、そういうものほど先に手を付けておくことで安心して、あるいは気を楽にして取り組むことが可能になります。

若者へのメッセージ

私たちは「遊びをせんとや」生まれてきたようなので、この限られた寿命の間を少しでも自分らしく生きるため「仕事」として持ち時間を切り売りすることでその対価を得て自己実現を目指しています。
でもだからと言って自分が嫌だなと感じるようなことはしたくはないですね。現代では生きるためには何か仕事をすることは現実として避けられませんが、どうせならば楽しく仕事をしてプライベートも楽しく充実、これを目指したいものです。そのための一時的な努力は怠らないようにしたいものです。
しかしながら、「自分に合わない」ものは必ずあります。「思っていたのと違う」と感じたらボタンを掛け違えているかもしれませんので、経験値を積んだと思い新たな分野にチャレンジすることもありだなと思います。ただし洋の東西を問わず人の足を踏みに行くと必ずしっぺ返しを受けますから自分なりの進み方を見つける努力は必要です。それがイノベーションにつながり、仲間を集め、時間はかかっても世の中の注目を集めることにつながります。そういうことが出来る時代になってきたと思います。