社会福祉法人 横浜社会福祉協会 理事長

小林 進

Susumu Kobayashi

丁寧に勝る近道はない

小林 進

略歴

大学を卒業後は一般企業に就職。数年の経験をしたのち父が理事長を務めていた現社会福祉法人に転職、特別養護老人ホームの施設相談員を経て施設長を経験。その後法人本部へ異動、平成24年理事長に就任する。
就任後はこれからの時代を考える社会福祉法人を目指し、福祉の追求という新しい理念を掲げる。次代の福祉のあり方を模索しIOT機器の導入、SDGsの理念を取り入れるなど、職員が継続して働きやすい環境を整えるべく奮闘している。

現在の仕事についた経緯

私自身は大学で商業を学び、マーケティングを専攻するなど、世の中における市場の原理やビジネスそのものに興味がありました。大学卒業後は商業施設の管理等マネジメントをする企業に就職。人に恵まれ、若くして大規模な仕事にかかわる経験を得たり、新規事業の情報収集を任せてもらうなどしました。
ただ自分自身が社会人として働いてみると、祖父、そして父が守ってきた社会福祉法人について世の中での大切さに気付くとともに、それを継続していることの偉大さを知って後を追いたいとの思いが芽生え転職。特別養護老人ホームで担当職を務め現場での仕事を学び、その後施設長として施設管理を学びました。施設で働く中でこれからの社会福祉法人がどうあるべきかを考え、その考えを実現すべく現在は理事長職を務めています。

仕事へのこだわり

この仕事をしていて特に感じるのは、丁寧であることの大切さ、そして縁の重要性です。
社会福祉法人を運営する中では、新しい事業を開始する、それに伴い新しい施設を建設するなど、何かと法人以外のたくさんの方とかかわることがあります。皆さんその道のプロですので精一杯の協力をしていただけますが、様々な事情の中でそれぞれの仕事をしていますので、時にはトラブルが起きることもありますし、それに至らないまでも不穏な空気が流れることがあります。代表としてその対処にあたることがありますが、そのような中でも決して慌てず、人には丁寧に接するようにしています。すべての仕事は人がかかわることでできていますので、人に丁寧に接することはやがて自分に返ってきます。私自身そうして接していたからこそ、いざというときそれが縁で多くの人の助力を得ることができたという経験をしています。情けは人の為ならずという言葉の意味を実感する日々です。
あと福祉業界以外の情報にも気を配ることにしています。例えば国際情勢や金融関連、最近であればSDGsやそれに関するセミナーなど、可能であれば出席したりオンラインで視聴したりしています。ある業界はそれだけで成立するのではなく、全体の中のバランスで成立しています。広く情報を収集することで自分の業界のあり方が見えることがあると思っていますし、時には事業に直結するアイデアを思わぬ角度から得られるときもあります。同じ意味で町を歩いたり、新しい取り組みをしている店舗を見たりと体感を得ることも大切だと思っています。新型コロナで体感を得る機会は減りましたが、オンラインの情報発信が増えたので、今までは得られなかった情報に触れる機会は増えたように思います。

若者へのメッセージ

仕事をしていれば、穏やかな日も、忙しい日も、楽しい日も、つらい日もあります。それは日常の中にもありますが、仕事はそこに自分の責任と他者の責任が密接に絡むため大変に複雑で、時に耐えられないような大きな不安をもたらす事もあります。
私自身の経験としては法人の理事長に就任して数か月で前理事長である父が急逝しました。正直若くして理事長に就任した身であり、聞きたいことがたくさんある中でしたので羅針盤を失ったような強い不安を感じたことを覚えています。ただ、その中でも自分の責任を全うすべきであるという思いを胸に、自分の足元を見つめ、目の前の課題に丁寧に向き合うことを繰り返しました。精一杯考え、決断し、それを丁寧に説明する、そしてそれをひとつひとつ積み重ねることでやがて大きな組織が動き出す。今になって思うと、その積み重ねそのものが私の代表職を継続するための素地となったような気がしています。
若い時に仕事の不安が目の前にあると、本当に真っ暗に思えてしまうというのはよくわかります。つらいですが、丁寧に乗り越えればその先がある、そう思ってもらいたいですね。