株式会社PURI 代表取締役

北村佑介

Yusuke Kitamura

今日客来布丁(こんにち、きゃくプリンにきたる)

北村佑介

略歴

大阪あべの辻調理師専門学校卒業。大手有名洋菓子店に入社し、洋菓子の基礎を学ぶ。
その後バリスタを経験し、某カフェの統括チーフパティシエに就任。AKBグループの生誕祭のケーキを手掛ける。
2014年、プリン研究所をオープンし、日本一高級な抹茶プリンが話題となり、取材が絶えない。

現在の仕事についた経緯

洋菓子の修行時代に小麦アレルギーを発症し、このまま仕事を続けるのは無理だと感じました。今後何をするかを考えた時に、一番最初に思いついたのがプリンだったので、最初は妥協から始まりました。
しかし、プリンを追求していくうちに、原材料がどれだけ大事なのかに気付き、どんどんのめりこんでいきました。使用する全ての原材料を追求するようになり、今に至ります。

仕事へのこだわり

洋菓子は化学だと考えており、化学的な視点で物事を見ていました。
それまで、洋菓子の職人は、感覚的に「これくらい」という説明をされるのですが、「なぜこうなるのか」という理屈がないと上手くできませんでした。そのため、自分で仮説を立てて、先輩の「これくらい」を化学的に再現することを心がけていました。
プリンも同じで、卵の凝固温度や素材の味の引き出し方など、全て化学的な根拠を持って作っています。
ただ、どうしても化学だけではできないこともあります。
それが、味覚です。
味覚は「感覚」なので、どれが正しいという基準が難しいのです。コンクールがあるような素材、例えばコーヒーだと、国際的に「正しいおいしさ」の基準があるので、その味を知ることでそのコーヒーの持っている正しい味を引き出すようにしています。

若者へのメッセージ

私は洋菓子のことしか分からないので、洋菓子界で頑張っている方にしか何も言えませんが、洋菓子を含む飲食店は今もブラックな企業が多く存在します。
最近でも、世界的な有名店が告発されたのは記憶に新しいです。
それは氷山の一角で平気で残業代が出なかったり、給料も少ないという職種です。
それでも技術を身に着け、将来独立するという夢を持って頑張っている若い方もいるかと思います。

今は昔とは違って、どんなに技術があり美味しい洋菓子を作れたとしても、売り方を知らないと売れない時代になってしまいました。逆に言うと、そんなに美味しくなくても売り方さえ知ってしまえば売れる時代なのです。
もちろん技術を身につけることは大事ですが、「なぜ自分が働いているお店のそのケーキが人気があるのか」、食べ歩きをするなら、「なぜこのお店のこのケーキは人気があるのか」それを俯瞰的に見る癖をつけてください。
売れるものは必ず共通点があります。

洋菓子店なら、店主の経歴、その洋菓子のジャンル、日持ち、保存方法、メイン素材の背景、素材の組み合わせ方、見た目の特徴、パッケージ、どういう風に認知されるようになったのか等、ありとあらゆる情報を記録してみてください。
それを見ていると、共通点が浮き彫りになり、俯瞰的に商品を見ることが出来るようになるでしょう。
そうなると、どういう商品が売れるのか、どういう風にすれば売れるのかが分かるようになってきます。

売れる商品を作れるようになれば、自分の好きな商品を売ることも出来るようになります。
ただ、忘れてはいけないのは、目の前のお客様の存在です。めちゃくちゃ売れるようになって、どれだけのたくさんのプリンを作っても1人のお客様の口に入るプリンは1つです。
今日客来布丁(こんにち、きゃくプリンにきたる)というのは、元々は茶道の言葉で、本来は「今日客来茶」という言葉で、今日という日は、過去から現在、そして未来へと続いている。楽しい思い出とともに、今一度出会った人達に感謝を込めて一服のお茶を差し上げ、直心の交わりの一時を持ちたいという意味があります。
うちはプリン屋なので、茶ではなくプリンだから、中国語でプリン「布丁」と言葉を勝手に変えて、座右の銘にしています(笑)。

初心を忘れず、技術と知識、両方を身につけ、あなたの力で、この洋菓子界を盛り上げてください!