アジャイルプラス法律事務所代表弁護士

木下和博

Kazuhiro Kinoshita

人間青山

木下和博

略歴

2003年10月弁護士登録、大手企業の危機管理案件や第三者委員会での調査案件のほか、多くの訴訟案件に携わる。2006年1月に前事務所に転所、企業のコンプライアンス体制構築、特に個人情報保護関連業務に注力するとともに、危機管理対応等に引き続き専門性を発揮する。2009年10月に同事務所パートナー弁護士に就任。2020年1月に独立、アジャイルプラス法律事務所を設立。

現在の仕事についた経緯

一言で言ってしまえば「成り行き」です。
もともと私は理系科目が得意でしたが、当時片思いだった女の子を追いかけて文系に進み、公務員試験の勉強のつもりで始めた法律科目が面白くなって司法試験に転向、検察官を志望して進んだ司法修習で一時は裁判官志望に転向したものの、興味本位で訪れた弁護士事務所で好奇心を刺激されてそのまま入所しました。
こんな感じで、この手の話によくある「弁護士に憧れる」ようなエピソードは私にはありません。
ただ一つ言えるのは、私の原動力は常に好奇心であり、「面白そうなこと」を追いかけて今に至っているということです。そして今ではその判断が間違っていなかったことを確信しています。

仕事へのこだわり

常に「で」の先を考え、具体的な行動指針を提案するのが私のこだわりです。
長いこと弁護士をやっていると、誰しも相談者から「あのときあなたはこう言っていたのに」的ないわれのない非難を受けることがあります。そういう場合は大抵何か前提条件も説明しているはずなのですが、多くの場合、相談者は自分が聞きたい話しか覚えていません。そんな経験を重ねると、だんだん「それは法的には〇〇です」とか「その先は御社の経営判断です」といった助言に終始して「弁護士の仕事はここまで」という線を引くようになります。でも相談者としては「で、私は具体的にどうしたらいいの?」と途方に暮れてしまいます。現実の問題に直面している相談者には「で」の先の具体的な行動指針が必要なのです。
そこで私は常に「で」の先までアドバイスしたいと考え、アソシエイトのころにはパワポで大きく「で」の一文字だけ印刷した紙をデスクの正面に貼り、クライアントへの回答を作成するときには、最後に「で?」と言われないよう具体的な行動指針まで意識して回答する習慣づけをしていました。弁護士のアドバイスには責任も伴うため、そこまで踏み込んだ回答をするのは正直怖い。だから私はクライアントのリスクを様々な側面から考えます。怖いから考えて考えて考え抜くのです。現場で悩んでいるクライアントの何倍も考えることでしか「で」の先は見えてきません。もちろんアドバイザーである弁護士には限界もあります。でも「本当にそれが限界か?」と「で」が問いかけてくるのです。そうした反復で身に付いた私の目利きに期待してくださるクライアントからのご相談に今日も「で」と共に取り組んでいます。

若者へのメッセージ

「考えるな、感じろ」これは「燃えよドラゴン」という映画の中で主演のブルース・リーが使った有名なセリフで、最近でも若い人が使っている場面に出くわします。
その場合「理屈より自分の感覚を信じろ」という文脈で使われることが多いようですが、実は映画ではこのあとに「月を指している指に目を奪われるな」という意味のセリフが続きます。その背景には「指月」という禅問答があり「月(目的)に至るには月をさす指(手段)に執着してはいけない」という教えを含んでいます。
問題解決の方法を探るとき、必死に考えれば考えるほどそれまで考えた過程に執着してしまい、異なる意見に対し必要以上に批判的になってしまうことがあります。でもそのときあなたは月から離れていっているのかも知れません。プロが最優先すべきは常に問題解決であり、そこに至るまでの努力は手段でしかありません。努力が無駄になっても問題が解決できれば仕事は成功なのです。
プロとして仕事をしたいのであれば、目の前の課題に集中して全力で考えて考えて考え抜きつつ、どこかで常に月(獲得目標)を感じていること、この一見矛盾する視点を両立することが大切です。
「考えろ、だが感じろ」これがブルース・リーが本当に伝えたかったことだと私は考えています。