さくら国際法律事務所 弁護士

板倉由実

Yumi Itakura

人間万事塞翁が馬

板倉由実

略歴

津田塾大学国際関係学科卒業。新卒で某大手国際物流会社に入社。女性に対する暴力、外国人差別、教育格差など社会的課題を追求する仕事に従事したいと考え、社会人として仕事を続けながら、独学で勉強を始め、司法試験に合格。2005年に弁護士登録し、都内の法律事務所に勤務後、2014年、日弁連の推薦でカリフォルニア州立大学バークレーロースクールに留学。帰国後は、東京弁護士会が運営する公設事務所「東京パブリック法律事務所」の外国人・国際部門にて、家事事件・労働事件・刑事事件・一般民事事件を問わず、国内外の依頼者から英語と日本語で法的サポートを行う。2021年6月、東京日本橋にさくら国際法律事務所を開業。
著書に「現場で役立つ!外国人の雇用に関するトラブル予防Q&A 」(編集責任。労働調査会)、「外国人事件ビギナーズ」(共著。現代人文社)など多数。

現在の仕事についた経緯

中学校から大学まで女子校であり女性だけで何でもすることができ、優秀な友人に囲まれていました。学生時代は、男女差別など存在しないと思っていました。大学4年時の就職活動で面接官は男性が圧倒的多数、役員面接になると女性が皆無であり、ショックを受けました。就職後も女性ということだけで、意見が軽視されたり、男性が優遇されている現状、有能な女性の先輩や同僚が結婚や出産を機に退職したり、パートなどの非正規雇用になって行くのを目の当たりにし、世の中、不平等だと思いました。
そんな中、女性弁護士が書いた男女雇用差別、ドメスティックバイオレンス、セクシュアルハラスメントに関する著作を読み、法律で困っている人を助けることができる弁護士になりたいと思いました。

仕事へのこだわり

社会の不平等や暴力に苦しんでいる人、困っている人を法律の力でサポートしたいと思ったのが、弁護士になった動機です。弁護士は社会的な地位が高い職業とされており、一般の方からすればまだまだ敷居が高い存在です。
私自身、無意識のうちに「助けてあげる側」の上から目線の正義感で対応していないか、言葉の言い回し、態度には常に気をつけています。弁護士のところに相談にいらっしゃるのは、よっぽどのことであり、もともと面識があるわけでもない弁護士に、深刻な悩みを相談することは、とても勇気がいると思います。
法律家と言うと、法的アドバイスをしたり、裁判手続などで代理人として法律行為をすることが仕事ですが、特に初回の相談時には、依頼者の方のお話をゆっくりお伺いし、お気持ちやご希望を理解、共感することを優先しています。私の場合は、離婚や相続等の家事事件や使用者・労働者側双方からの労働・労務問題に関する相談が多く、この分野はとても感情的な対立が激しくなりがちです。紛争の相手方に「勝つ」ことを目指して、紛争を激化させるのではなく、どういう解決が依頼者の「利益」になり、「満足」につながるのかを考えています。
またビジネスの世界のみならず、家族や職場もグローバル化が進んでおり、国内外から英語ネイティブの依頼者は確実に増えています。実際、私の専門は、家事事件と労働事件という日常生活に密接に関連する分野ですが、クライアントの半分以上は英語ネイティブの外国人の方で、海外の相手方、企業、弁護士と英語でやりとりすることは当たり前になっています。英語のブラッシュアップはもちろん、文化やビジネス慣行の違い、海外の法律について、常に勉強しています。

若者へのメッセージ

新卒時の就職活動の時、自分の興味や関心、やりたいことを整理して、面接でも上手に自己アピールできて、大手有名企業数社に内定をもらっている方っていらっしゃいますよね。本当に素晴らしいと思いますし、うらやましいです。ですが、20代で社会に出て間もないのですから、なにをやりたいのかわからない方が普通だと思います。
ただ、長期的に見ると、大手有名企業に就職しても、病気になってしまうかもしれないし、解雇されるかもしれません。小規模で知名度が低い会社でも、面白い優秀な人たちが集まっている会社や組織はたくさんあります。若い頃は、他人と自分を比較しがちで、落ち込むことも多いと思いますが、自分なりの好奇心をもって、いろいろな人と出会い、たくさんの本を読むうちに「こんなことがしてみたい」というビジョンが湧き上がってくるではないかと思います。
また、若いうちに日本以外の国に半年以上、住んでみることをおすすめします。できれば大学や大学院に留学できればベストですが、お金や時間に余裕が出てきた50代、60代で海外の大学院に留学し、修士号・博士号を取得し、人生を楽しんでいる方は、私の周囲にも実際に存在します。こういう大人になりたいな、という人を一人見つけるといいかもしれません。