一般社団法人ソーシャルデザイン・ラボ 代表理事

濱村 誠

Makoto Hamamura

好きこそ物の上手なれ

濱村 誠

略歴

小学生の頃からコンピュータ一筋で、筑波大学で情報科学を専攻し、現在のNTTデータに就職しました。大学生のころからいつかは起業すると決めていたので、ノウハウを身につけるためがむしゃらに働きました。
そして、イントレプレナーとして起業する機会を得て、29歳の時にB2BのEコマースソリューションを開発・販売する会社を立ち上げました。NTTデータの看板のおかげで、多くの先輩経営者から学ぶ機会を得ることができ、技術バカから駆け出し経営者に成長することができました。
その後、グローバル化の流れとともに、中国では開発拠点の設立、東南アジアではNTTデータマレーシアで社長を経験し、中南米では買収した企業グループで経営に関わるなど、IT分野において多面的に経営の経験を積みました。
そして、2021年に一般社団法人ソーシャルデザイン・ラボを設立するとともに、バングラデシュの大手IT企業であるBJIT社の戦略担当役員を務めながら、「事業課題の解決と社会課題の解決を両立するための」ソーシャルビジネス開発と社会起業家の育成に取り組んでいます。

現在の仕事についた経緯

南米のチリに駐在していた時、娘がグローバル系の大学を受験するというので、グローバルイシューについて議論する壁打ち相手をしていました。そして、ソーシャルビジネスの意義とその難易度の高さを知り、私の挑戦心に火がつきました。

その後、NTTデータと戦略的に連携する非営利法人の設立を目指し、2018年に帰国して本業の合間に活動を続けました。しかし、大企業において社会課題の解決は、本業での儲けのついでというのが本音でした。また、経営学的には分かっていることですが、ソーシャルビジネスやイノベーションといった成功確率が読めない長期視点の活動を、営利企業において推進することがいかに困難であるかという事を改めて痛感しました。

一方で、SDGsに対する関心の高まりもあり、社会貢献意識の高い若者や、セカンドキャリアを意識したシニアのボランティア参加が活発になっています。私はそのような人たちの活動の場を創り、そして、社内では出来なかった大企業の社会貢献活動を、外からサポートするために非営利法人を立ち上げました。

仕事へのこだわり

私は、実践したこともないスキルでお客様を満足させたり、仲間から信頼を得たりする事はできないと考えています。そのため、とにかく何でも自分でやってみることにこだわっています。
そして、闇雲な実践だけでなく学習を組み合わせる事で、効果的に経験値を積み上げることができるので、日々の学習時間の確保にもこだわっています。

例えば、新人の頃からハードな働き方をしていたため慢性的な寝不足で、電車で座ろうものならすぐに眠ってしまう状況でした。そこで、電車では絶対座らないと決め、勤務先からあえて遠いところに住む事で(幕張から横浜に通っていました)、逃げも隠れもできない通勤電車内という勉強場所と時間を確保しました。そして、読書や通信教育、NHKラジオ講座などに取り組むことで、新人の時から年間800時間以上の学習を続けてきました。

実践面では、今でも最新技術に触れ、プログラミングを始め、クラウド環境の構築やVRアバターの製作まで、自ら手を動かして技術の本質を理解しようと努めています。そうすることで技術者たちとも同じ言語で共感し合うことができ、最高のコミュニケーションツールとして経営にも大変役に立っています。

これまでの経験で、やりたい仕事をうまく進めるには、説得するより共感を得るべきだと考えています。
私の体験をお話しすると、2005年ごろから海外での仕事が多くなり、様々な国の方々と働きました。その時はコミュニケーションツールとして世界遺産を活用しました。みなさん自分の国の世界遺産のことは知っており、外国人がそれを褒めてくれることに不快感を覚える人など一人もいません。そこで、実際に世界遺産を訪問し、彼らの母国語で具体的に良かったところを話すと、みんな本当に喜んでくれて、チームビルディングの最高のツールだと実感しました。今では55カ所の世界遺産を訪問しましたが、すっかり手段が目的化してしまったかもしれません。

さて、仕事へのこだわりに話を戻すと、お客様や仲間の共感を得るには、国や文化に関わらず「自分の経験に基づいて、自分の言葉で伝えること」がとても効果的です。そして、それを実践するためにも、「とにかく何でも自分でやってみる」を今でも続けています。

若者へのメッセージ

一般的に企業では損得勘定が基本にあり、論理的に物事を進めるように鍛えられます。しかし、人間というのは感情の生き物です。ましてやボーダレスで価値観が多様化し、サステナブルな社会への関心が高まるほど、損得勘定に基づいた企業の論理では共感を得ることが困難になるでしょう。また、経営学においても心理学が注目されており、人の感情に寄り添うことで活路を見出そうとしています。

また、AI活用が一層進む社会となりますが、AIが苦手な領域として、パッション、クリエイティビティ、ヒューマンコミュニケーションが挙げられており、いずれも論理ではなく感情の領域です。

そういったこれからの時代を生き抜く若者たちには、人の感情に寄り添い、既存の社会や企業の枠組みに囚われず、イノベーティブな発想をする訓練をし、それを習慣にして欲しいと思います。

一朝一夕でできることではありませんが、「好きこそ物の上手なれ」、何でも自分でやってみて、熱く語れる大好きな事を見つければ、あとはそれを無理やりにでも仕事に結びつけるだけです。きっと新しいワークライフバランスのかたちが見えてくると思いますよ。