日本街路灯製造株式会社取締役会長

後藤保正

Yoshimasa Goto

なにかを目指したら、続ける

後藤保正

現在の仕事についた経緯

弊社は私の父が創業したものでして、私は大卒・大学院修士課程修了後、他社に3年間勤め、27歳のときに弊社に入社し、それ以来ずっとおります。
当初、私は会社本部で、事務をまとめる部署におりました。そこでの業務の多くを電算化しました。初期型のパソコンもファックスでも、新しいものはどんどんと取り入れました。それというのも、とりわけ弊社の専門である街路灯のデザインを、可視化する必要もあったからです。といっても、当時の私は2代目ということで、本部にいて指示を出すくらいで、たいした仕事はしておりません(笑)。
そんな私も40歳で副社長となり、46歳で社長に就任しました。それまでの社長は創業者である父でした。父は経営者としても技術者としても優秀で、体は弱かったですが、毎日会社に出ては、様子を見ておりました。そんな私は平凡な二代目でしたので、当社を大きくすることはできませんでした。それでも新規事業など手掛けようとしたこともありますが、力不足で本格的な進出はできませんでした。もし実行していたら、弊社はいまごろ大企業になっていたかもしれませんが、他社との競合に敗れて消えていた可能性もあります。専門に徹してきたことで、特色ある中小企業として今に繋がってりいると自らを慰めています。

仕事へのこだわりと今後の目標

弊社は1970年代から同じ市場で生きている、稀有な会社です。ですから30~40年も同じものも造っております。それはそうした弊社の製品の市場が今もあるからです。
そもそも弊社の仕事は、商店街の街路灯をつくることでした。今も大切な仕事です。これはニッチな分野のため、強い同業他社が少なかったことも要因のひとつです。
ところで私は、30代前半にアメリカに行きました。その際に現地では日本の商店街のような場所をほとんど見かけませんでした。それで街路灯が高速道路やふつうの道路にあるものが主流と気づきました。
そこで日本の現状を鑑みると、そこは大企業の独壇場でした。私はそこに、すき間がないか考えたのです。するとデザインの部分に参入できると気づきました。
弊社のある名古屋では、人と車が融和したコミュニティ道路が多くあります。そういうところへのデザイン性ある街路灯の提案を増やしました。すると全国のあちこちの街で、それらが浸透していったのです。たとえば昔からの宿場町では、そこに合った雰囲気の街路灯をデザインするなど。
その延長で現在でも名古屋市内では、公園などに弊社デザインの街路灯が多数、存在します。またそうした工事の際に、他社の製品を使うことも多いことから、多くの大メーカーとの取引も増えていきました。
まず弊社は直販が基本ですが、全国から仕事をいただくため、日本中のいたるところに弊社製品が存在します。そのなかにはちょっと風変わりなものもあり、また有名なものもございます。そうした自社作品を見るのは、楽しく嬉しいことです。
また弊社にとってゆずれないところは、オリジナルの街路灯をつくるなら日本一という点です。最近ポチポチと同業他社が新規参入してきましたが、これは計画が長期的なので商談に手間がかかり、なかなかむつかしいのが現実です。
日本が成熟した経済大国であるかぎり、弊社の仕事は続いていくでしょう。

現在の弊社は、50歳になる私の息子が社長を勤めており、パン屋や東京では不動産賃貸にも進出するなど、積極的に動いております。そして私は会社経営には口を出さず、業績数字も見ておりません。そうすると私は会長としてどういう理念を抱いているのかと言えば、とにかくどんな仕事も続けるのが大切という点です。新しい仕事も従来からの仕事も、どうやって続けるかということに執念を燃やすことが重要です。
そのため必要なことは、社員を大切にすること、笑って自由に発想、自由に行動する、ことです。これは社是ではないですが、まさに「自由」であることが弊社の理念です。
ですから弊社では、「年令・性別・学歴・国籍・新卒・中途・出戻りから自由」と言い続けています。そして今の時代、有名大学から若くて優秀な人はあまり来てくれません(笑)。
ならば、いまいる人たちに、気持ちよく・自由に力を発揮してもらいたいと思っているのです。


若者へのメッセージ

「なにかを目指したら、続ける」です。やるというなら、とことんやりましょう。私も毎日、歩いたり走ったりしています。スマホに歩数計があるのに気づいてからの5年間は、雨でも一日も休んだ日はありません。
特別な才能がない人間は、なにかを徹底するしかありません。むかしの職人さんたちは、叩かれ蹴られ、仕事を覚えていきました。そのときはイヤだと思っても、後から見たらそれが自分の天職だったと納得できるものです。
最初にあれもこれもと力んではいけません。とことんやり続けることが、大切です。