大塚実業株式会社 代表取締役社長

大塚雅之

Masayuki Ohtsuka

本来無一物

大塚雅之

現在の仕事についた経緯

私は2代目。長男。弊社の創業者である父の長男として生まれた私は、もともと学生時代からイベント企画などの分野でビジネスに精通してきました。いわゆるイベントサークルや体育会系の合宿などを自ら主催し、様々な学生ネットワークを作ってはイベントを行なっていたんです。当時はクルーザーを貸し切ったり、旅行代理事業に近い活動も行なってきましたから、理系でしたが大学卒業後に旅行会社に勤めたのは自然な流れでもありました。
当時は父から会社を引き継ぎ、2代目になることを考えていたというより、自ら会社を起こしてやっていきたいという思いの方が強かったんです。そのため旅行会社に勤め始めてからも人脈づくりは続け、様々なニーズに応じたサービスのコンシェルジュ事業を目論んでいました。しかしそんな矢先に父が病に倒れ、急遽会社に呼び戻されることになったんです。今から約25年前のことです。
今の仕事は決して好んで始めたわけではありませんでしたが、仕事を続けていく中で事業の面白みに気づいていきました。当社では、自社で織った生地をフィルターとして加工し、納品する開発事業を行なっていますが、とてもニッチな業界と言えます。そのため本を読めばわかるノウハウはなく、奥が深い。経験値がものを言う側面もあります。入社当時から現場の最前線で実験やテストを繰り返し、業界で始めて導入した国内初のシステムなども手掛けました。試行錯誤がありましたし、仕事を通じてお客様から喜ばれた時は非常に大きなやりがいを感じます。そうした事業の奥深さがこれまでのモチベーションの一つにもなってきたように思います。

仕事へのこだわりと今後の目標

私は学生時代から多くの人脈やネットワークを築いてきたことで、一人の力ではできないことも、大勢の力を集約すればどんなことでも成し遂げられるんだという事を体感として学んできました。
だからこそ現在も大事にしているのは、人とのご縁です。弊社の理念でもある通り、家族や共に働く仲間、関わる人たちの幸せが何よりもの優先事項です。人は宝だと思うからです。
一度きりしかない人生において、多くの時間を共に過ごすのは家族同様である社員の存在。その中で、一緒に過ごすことができてよかったなと思えるような組織づくりが大切だと考えてきました。社員や共に働く仲間がいるからこそ弊社が存在する訳ですし、そこには感謝しかありません。
社員や共に働く仲間の声に耳を傾けることは常日頃から意識していますし、それはお客様に対しても同様です。たとえ専門外のご相談でも、「あいつに聞けば何かしら回答を示してくれる」と言われるような存在でいたいですし、頼っていただけることに大きな使命感を持っています。その積み重ねが信頼関係にも繋がっていくのではないでしょうか。
多くの企業では経済性を優先していることが多いようにも感じますが、私は社会性がもっとも重要だと思っています。仕事とは、世の中のお困り事を解決することであり、儲かるか儲からないかではなく、社会にとって良いか悪いかを判断基準に仕事を続けてきました。

現在、弊社に在籍している社員の中には高卒の方もいますし、彼らが定年を迎える頃に私が社長である可能性は限りなく低いでしょう。しかし私が引退していたとしても、会社は雇用を継続し、存続し続けていなければいけません。それが企業の絶対命題だと思っています。
そのためには現状に満足するのではなく、あらゆる挑戦も続けていく必要があります。
ここ数年は海外進出の準備も進めており、近くベトナムに拠点を構える予定を立てているところ。ASEAN市場をリサーチしていく中で、ベトナム市場にはフィルターのメーカーが存在しないことが分かりました。確かな勝機があると思っています。
そして社長就任から11年が経ちますが、今後も挑戦を続けていくためには私のみならず、中間管理職やマネジメント層となる人材をさらに育てていかなければいけないでしょう。そのあたりは現状の課題でもあると考えています。

若者へのメッセージ

若い方々に一番に伝えておきたいのは、「あなたは存在していいんだよ」ということです。
わかりやすく言い換えれば、きっと周囲の誰もがあなたに期待しているし、自信を持って自己肯定をしてほしいということ。必ず誰かに必要されているのだと自己を肯定した上で、自分ができることを精一杯やり抜くことから道は開けていくものだと私は思っています。
日本は豊かな国ですが、これだけ快適に暮らせているのであれば、誰かがどこかで快適に暮らせるような努力をしてくれているということでもあります。決して周囲の環境や社会のせいにせず、「自分なんて」と悲観せずに、全ての物事に感謝して生きてほしい。
「有難う」という言葉は、「有ることが難しい」と書きます。つまり世の中にある当たり前に有ると思われてることは何一つないという事です。だからこそ、全ての物事が感謝する対象だと私は思います。自己を肯定し、全てに感謝の気持ちを持ち、常に動き続けてください。