合同会社うんすい宅建代表社員・宅地建物取引士

阿部浩一

Koichi Abe

行雲流水

阿部浩一

略歴

保育士を志し、専門学校へ進学するも中退。地元の書店に非正規社員として10年間勤務。
2006年に上京後、NGO団体の職員として8年間勤務する。
退職後、フリーランスのイベンター、社会福祉法人の職員、NPO専門コンサルティング事務所の運営などを経て、2021年4月、合同会社うんすい宅建を創業する。
30年来、シンガーソングライターとしても活動。楽曲制作や下北沢を中心に演奏活動も行っている。

現在の仕事についた経緯

長くNPO業界に身を置いており、不動産業に関しては全くの未経験で創業しました。
縁あって児童養護施設に関わることがありました。児童養護施設はさまざまな事情から親権者と暮らすことができない子どもたちが生活する場所です。ところがそんな子どもたちも、18歳になれば原則として、施設を出なければなりません。
とはいうものの、虐待や育児放棄に遭ったような子たちは、社会へ出てもうまく人間関係を築くことができず、仕事も失い孤立してしまう例は少なくありません。
そういう子たちが一時的に身を寄せる場として、不動産を寄付される方がいることを知り、寄付者と受益者をつなぐ仕事をしてみたいと考えました。そして、私自身がゲイの当事者ということもあり、LGBTsの住居問題に取り組みたいと思ったことは大きいですね。

仕事へのこだわり

私は組織というものが苦手で、いわゆる会社員というものを経験したことがありません。ポリシーとかそんなかっこいいものではなくて、逃げ回ってきたという表現のほうがふさわしいように思います。常に組織に自分の人生の大半を預けるような生き方だけは避けてきました。

かと言って、人が嫌いかと言えばその逆で、一個人の立場でいろんな個人や団体とコラボレーションしながら仕事や課題に取り組むときがいちばん楽しい時間だと感じています。そんなときの私はプロジェクトの仲間たちをうまくコーディネートでき、自信にあふれているように見えるのではないでしょうか。

ところが、少しでも組織の一員に近い、縛られたポジションに身を置くと、途端にダメになってしまいます。自分自身がリーダーとして、組織の中で采配をふるう場合でもそれは同じで、独裁者のようになってしまいがちです。
こんな私のように組織が苦手な者は、私がそうであったように、これまでの社会ではとても生きづらさを抱えざるを得なかったのではないでしょうか。ゆえに、何らかのキャリアを重ねてきたという実感はほとんどなく、情けない話ですが、必死に逃げ回ってたどり着いた場所が今だというふうに感じています。

5年前、10年前と比較しても、私のような組織嫌いさんの選択肢は増えてきているように思います。私が年齢を重ねてふてぶてしくなった面もあるのでしょうが、少しずつ生きやすい社会に近づいてきているのではないでしょうか。私は不動産会社の社長ですが、同じような生きづらさを抱える仲間たちとゆるやかなコミュニティを形成して、集える場を作ることも私の使命だと考えています。
そんな思いを形にした本の出版が2021年12月17日に予定されています。

若者へのメッセージ

日本では「人に迷惑をかけてはいけません」と教えられてきた人が多いと思いますが、インドの親は子どもに「おまえは他人に迷惑をかけるのだから、他人からかけられる迷惑にも寛容でありなさい」と教えるのだそうです。
どっちがやさしいと感じられますでしょうか。

困ったときには堂々といろんなものを頼りましょう。そして、身近な人や知らない他人のこともたくさん助けてあげてください。ベタベタした人間関係を築く必要はありませんが、干渉し合わず、お互い困ったときは真っ先にかけつけられるような緩いつながりを構築するのは、SNSなどを使い慣れた若い方のほうが得意なのではないでしょうか。そして、もしも何らかの生きづらさに苛まれていたり、失敗して苦しんでいたりするときは、自分ばかりを責めるのではなく、社会のせいにしてください。社会という存在はあなたなんかよりずっと巨大で強い存在です。だから、あなたの痛みに寄り添う義務があります。

だけどこの社会には、あなたが一人で苦しんでいてくれたほうが都合が良いので、間違った情報を流す人たちがいます。安易に常識や権威を信用しないことです。
自分の権利を主張することや助けを求めることは「迷惑」なんかではありません。もっと自分のわがままを許し、他人のわがままも認めてあげてください。