株式会社プルータス・コンサルティング 代表取締役社長/京都大学経営管理大学院 特命教授

野口真人

Mahito Noguchi

死ぬ前に人が最も後悔するのは「挑戦しなかったこと」

野口真人

略歴

京都大学経済学部卒業。
みずほ銀行(旧富士銀行)、JP.モルガン・チェース銀行を経て、ゴールドマン・サックス証券の外国為替部部長に就任。デリバティブが目新しかった時代から一貫して事業法人や大手機関投資家に対して運用手法をアドバイス、その間ユーロマネー誌によるアンケートにて3度最優秀デリバティブセールスに選ばれる。
2004年に株式会社プルータス・コンサルティングを設立。
主な著書に「ストック・オプション会計と評価の実務」(共著、税務研究会出版局)、「ストックオプション儲けのレシピ」(同友館)、「種類株式・新株予約権の活用法と会計・税務」(中央経済社)、「戦略資本政策(新時代の新株予約権、種類株式活用法)」(中央経済社)。

現在の仕事についた経緯

外資系金融機関でオプションの専門部隊を立ち上げました。
引退後、ある会計士から「ストックオプションの評価が会計上必要になるのだが、やり方が全く分からない」と言われました。金融の世界から会計の世界に一歩足を踏み入れただけで、そこではオプションの専門家として重宝されます。それならば自分でやってみようと思い、先ずはストックオプションの評価会社をスタートさせました。
その後、評価業務をストックオプションだけではなく、M&Aにおける企業価値評価、種類株式評価、新株予約権評価、PPAなどに横展開していき、「評価の専門機関」の地位を確立しました。
また、ストックオプションの評価ができるならばその設計もできると考え、「有価証券の設計」という、今までにないビジネスを立ち上げました。
結果として、「業績条件付ストックオプション」「信託型ストックオプション」などが世に出ることになりました。

仕事へのこだわり

銀行に入社した時から、「この仕事は一体何のためにやっているんだろう?」また「この仕事は意味があるんだろうか?」という疑問がいつも頭の中から抜けませんでした。
他の優秀な同期は、まずは上司の命令に忠実に答え、仕事の意味は後で考えようという人が多く、結果として重宝されました。
その意味では自分が一番合わなかった業界は銀行かなと今になって思います(笑)。

銀行ではすべての行動がマニュアルによって管理され、そのマニュアルに少しでも逸脱した行為は全て減点の対象になります。また正しいと思う行為も、大人の事情を考えて動かないと、これもまた罰点がつきます。
例えば、昔銀行では付き合いも含め意味のない残業をよくやらされていましたが、帰宅時間をそのまま正直につけると上司からどやされたものです。今だったら考えられないことですが、昔は銀行ではまかり通っていたことなのです。

また曖昧な人事評価基準も好きになれませんでしたが、外資系に行ってからはその部分は非常にわかりやすくなり、少し改善されました。
要するに自分で儲ければその分が報酬に反映されるのでわかりやすいです。日本の銀行の場合はどれだけ突出した仕事をしたとしても、同期に比べ若干色のついたボーナスが出るだけです。将来出世することが目的なので、目先の給料やボーナスにはあまり関心がないのが日本の銀行員なのです。
将来どうなるかもわからない自分の出世のために、今を黙々と耐えて滅私奉公する勤勉さは全く持ち合わせていませんでした。

ただ外資系の金融機関で働いていると、あまりにも自社(自分)の利益のために仕事をすることにより、顧客の利益を毀損することもあります。例えば、非常にリスクのあるデリバティブ商品をそのリスクの許容度のない企業に無理矢理押し込んでしまうということです。ずっとそのようなことをやっていると魂が腐るのではないかと思い、プルータス・コンサルティングの起業に至りました。
今は投資商品やデリバティブ商品を売る事はなく、我々がお客様からいただく対価はすべて提案サービスに対する対価、もっと言えばサービスの満足に対する対価です。それこそがコンサルティング業務の醍醐味じゃないかと思っています。

若者へのメッセージ

このように書いてるからといって、決して若い人たちに初めからベンチャー企業や外資系企業に行けと言っているわけではありません。
矛盾するかもしれませんが、新卒では大企業に入るのも良いかなと思います。やはり大企業は様々なインフラがありますし、仕事の単位も大きいです。教育制度もしっかりしていることが多いのです。何よりもビジネスマナー等を身に付けるには、様々な年代が働いている大企業で先輩から教えてもらうのが良いと考えます。
初めからベンチャーに勤めている人と話すと、時々ですがビジネスマナーに欠ける人もいます。ビジネスにおける所作、言葉遣い、礼儀などの重要性は時代が変わっても変わらないものと感じています。初めからため口に近い口の利き方や、間違った敬語を使う人とビジネスを始めたいとは思いません。

基本的にビジネスの世界は商品ではなく、人と人との付き合いから始まると思っています。したがって、その付き合い方の基本路線は初めに入った企業で叩きこまれたほうがいいと思います。
ただ、どんな企業もその企業独特の文化、価値観があります。ビジネスマンとして経験を積めば積むほど、自分の仕事に対しての価値観が形成されてきます。

自分の価値観と今いる企業の価値観がマッチすれば、それは幸せなことで、長く働けばいいと思います。
もし合わないなと感じだしたら、転職するか起業したらいいと思います。