株式会社エムズファクトリー 代表取締役

松田裕美

Hiromi Matsuda

他者との差別化を図る

松田裕美

現在の仕事についた経緯

私がこの仕事を始めることになったすべてのきっかけは、子どもの保護者会でした。もともと私は手芸は苦手で嫌いだったのですが、その場でクラフトバンドでバッグをつくってみたのです。クラフトバンドは紙でできているので、簡単につくれました。それが好評で、バッグやカゴをつくっては友人たちにプレゼントしていました。
その後、私たち家族は千葉の一宮に引っ越したのですが、娘の友人のお母さん方から「自分もつくりたい」と言われ、教えていたら、すぐに小さな町で話題になりました。
最初はボランティアだったのですが、いろんなところから口コミで沢山の人が習いに来るようになったのです。長いこと専業主婦だった私は、「こんな小さな町で、こんなに需要がある?これは全国的に材料が欲しい人がいるに違いない」と、直感で仕事にすることにしました。
起業資金はへそくりの7万円からのスタートでしたが、当時にしてはめずらしいネットショップを開店し、原材料の紙を売っている会社を見つけ、製品の製造・販売を始めました。すると数年で会社の年商は1億円を超えていました。創業して19年目に入りますが、ネットショップと同時期に開設した講師養成講座には現在4400人の在籍があり、全国で講師活動をしていただいています。

仕事へのこだわりと目標

現在、弊社の従業員は35名いますが、正社員はその半数であり、創業当時からのママ友もいます。私の方針としては、新卒でなくてもいい、楽しく働いてほしい、というものでした。
ところが実際に経営を始めると、人の人生を預かる重さを考えるようになりました。というのも彼女たちにとっては、「お母さん」でいる時間より「エムズファクトリーの社員」でいる時間のほうが何倍も長いからです。さらに社員が働ける期間はとても長く、年齢を重ねると体調の変化や親の介護などに悩まされます。
さらに私はこの仕事を最初は趣味の延長として始めましたが、社会においては、そこで必要とされる会社しか生き残ることはできません。そのためには他者との差別化を図る必要があります。そうしたことから弊社では、製品をどこよりも安く、種類を増やし、ここでしか手に入らない等の付加価値をつけることにしています。
社長になってからは会社を運営する喜びと、社会への責任を負うことの大変さを実感させられています。

海外進出は、ずっと考えておりました。弊社はすでにアメリカのカリフォルニアに出店しているのですが、コロナによるロックダウン等もあり、大変な状況の時もありました。
ですが弊社の営業を拡大すると共に安定させるには、海外進出は避けては通れない道だと思っています。ですから英語や他の外国語を話せる従業員も確保しなくてはいけませんし、店を開く国の文化などにも精通しなければなりません。つまり弊社には、グローバル人材が必要ですが、まだ育成できていないというのが現状です。
本格的に海外展開するのはもちろん、コロナ禍が明けてからとなりますが、それまで可能な限りに準備をしておこうと思っています。

若者へのメッセージ

若い人には、自分が心から好きな仕事を探してほしいと思います。
私が天職に出会えたのは、36歳でした。焦らず、本当に楽しく働ける仕事を見つけてください。せっかくのご自分の人生なのですから、楽しまなければ損です。
どうかご自分も他人も笑顔にできる天職を、見つけてください。