株式会社グラフィック 代表取締役社長

船井 宝

Takashi Funai

朝に道を聞かば夕べに死すとも可なり

船井 宝

略歴

1963年生まれ。立命館大学法学部卒業。
印刷会社勤務を経て、船井電機株式会社入社。国内・海外駐在勤務を経て、現在に至る。
船井電機株式会社勤務時代は、経営者たる伯父から「夢と志」の大切さ、「魂の入った荷造り・梱包作業」の話を繰り返し聞かされたものでした(荷造り・梱包作業の話は、伯父の著作にも記載されております)。

現在の仕事についた経緯

元来読書好きで古書に囲まれた神田神保町界隈をほっつき歩いておりました。それは「本」の持つ手触り感・他者に対する「語り」への共感のようなものがあったのだと思います。
ところが、それらを覆していく位の価値観の変化をもたらしたものが、駐在員時代に目前で遭遇した9.11テロ事件でした。21世紀がスタートする時、社会・経済・生活、そして、世界環境への警告等々、それは大きな、且つ、新たな意味づけを世界に与えるきっかけになったのだと思いました。
その後、ふとした縁で、株式会社グラフィックに入社し、リサイクルトナーカートリッジ事業の根幹の思想をなす「再生」という概念に触れ、あの時に感じた世界観の変容への違和感が地球環境規模で新たな価値観をもって今の我々に迫ってくる時、グラフィックという会社の「理念」に立ち返り、社会や顧客にメッセージを発信し続けていくことの重要性と大切さを、社員と共に再確認し、歩んでいきたいと考えております。

仕事へのこだわり

常に“外から”物事を見ようと意識してきました。周縁部から観ることは、中心に存在するものを常に相対化して見ることだと思っています。
似たような意味合いを持つ文章が、中国古典の「老子」にあります(私が勝手にそう思っているのですが)。
「天下水より柔弱なるは莫し」
水は柔らかでしなやかでもあるが、それは、岩をも打ち砕く強さをもっている。
この一文はリーダー論にも、又、戦略論にもつながると言われています。事象を相対化し、柔らかな思考で物事を把握し解決する力が今の変革期において求められていると思います。
これまでも、そして今後も、知らないこと、分からないことは多く出てくるでしょう。それを解決していくにはどうしたら良いか。
思うに、柔らかな思考は、知らないことを知らないとして、「謙虚」に学ぶことを絶えず意識させると思います。
同じく中国古典には「貞観政要」という書物があります。ご存知の方も多いと思います。常にリーダーは謙虚であれ、という思想が根底にあるのですが、それは、人として問われるべき生き方の原点でもあると思います。そこから気づき、学び、反省する人間の在り方こそ、私が今でも不断に問い続けていることであると思っております。

若者へのメッセージ

まずは、自らが関心を持つ事に対して徹底的に「考え抜く姿勢」を身につけることが大切ではないでしょうか。
そして、考え抜いた結果を自らの事として“選択”する。普段の何気ない日常の中でそれに出会う機会は無数にあります。その機会を捉え、自分の頭で考え、自らの関心事をいかに形にしていくか?未熟であってもいい。その考え抜く姿勢が、今、問われていると思います。
今の時代は“完成形”が見えなくなっています。だからこそ、尚更、鉛筆一本、紙一枚で徹底的に考えることが問われていると思います。その姿勢こそが、次に進む原動力になる筈であり、これから皆さんが為すであろう仕事に“たましい”を宿すきっかけになるはずです。
更に、この考え抜く姿勢を支える、その人が持つ「人格」を磨く努力を続けること。例えば、他者への“思いやり”の精神は大事ですね。世界が不可視化し、希薄化していく中で、情報・システムと言ったワードは今や巷に溢れています。個々人を覗き込む位に各々が見えているようで、実は見えなくなっている社会において、他者への思いやりは、個人の成長を支えていく基盤として重要だと思います。
古の叡智を学ぶも良し、人と話をするのも良し。自らが考え抜き目標到達への努力を不断に為すとき、先に進む「チャンス」(機会)を見つけ、「チャレンジ」(挑戦)し、そして「チェンジ」(変革)を為すことができるはずであり、そこに「人格」が形づくられていくプロセスが見つかるはずだ、と信じています。