株式会社Otono 代表取締役

青木真咲

Masaki Aoki

「自分に正直に、今に生きる」

青木真咲

略歴

大阪府出身、京都大学卒。
日本経済新聞に入社し、東京、静岡で記者として勤務。転勤先の静岡の魅力に惹かれ、定住を決めて退職、静岡の活性化事業創出を目指し株式会社Otonoを創業。
自身の経験に基づいた「外の目」からの静岡の魅力を伝えるべく、県内学生・社会人向けに講演など行うほか、静岡朝日テレビの情報番組「とびっきり!しずおか」にてコメンテーターとして出演を経験。
静岡県知事による地域活性講話への登壇ほか、移住促進メディア「静岡移住計画」への掲載など多数。

現在の仕事についた経緯

京都大学卒業後、日本経済新聞社に入社し、記者として東京、静岡で勤務しました。
それまでは静岡とは縁もゆかりもありませんでしたが、静岡のまちに降り立った日、美しい石畳の道に、昔からある地域ならではの商店や雑貨屋さんが立ち並ぶ商店街を見て、想像していた地方都市とは違う驚きと、ゆとりある豊かさを感じました。
それから記者としてより深く静岡を知る中で、自然や気候に恵まれた産業が豊富にあるほか、地域ごとに特有の歴史文化が存在すること、何よりまちに暮らす人たちがとても優しく穏やかだと知りました。
東京で暮らしていた時は、あまりに便利な街、溢れかえる人や情報のなかで自分自身の人間性が失われていくような恐怖心を感じていたこともあり、道行く人が皆穏やかな静岡で過ごす中で、ここで生活しているだけで自分が少し幸せな心持ちで生きられるなと感じました。

ただ一方で、地元の人がこうした魅力に気付いていないこと、静岡ならではの魅力を伝えられていないという課題を感じました。この勿体なさを埋めることでまちに貢献したいという思いが、新聞社を退職し、自ら事業を始めるきっかけになりました。
大企業で記者として働くことは他の誰かが出来ることですが、それ以上に縁を持った静岡というまちで私なりの視点や経験を持って地域の魅力を伝えることの方が、社会を少しでも豊かに幸せにできるのではないかと考えました。

仕事へのこだわり

当社はまちに紐づく歴史やストーリーを伝える音声ガイドの制作をはじめ、商品開発やイベント企画など観光事業を行っています。その中で1番のこだわりが、企業ミッションに掲げている「まちの『光を観る』人をふやす」というものです。
「観光」という言葉は、県外や海外から訪れた人をもてなしたりサービスを提供したりするという意味に捉えられがちですが、言葉の語源は「光を観る」。つまりその場所が持つ良いところ、ステキなところを見つけることが「観光」なのです。ソトモノの私が感じた静岡が持つたくさんの魅力を、まずは地元で暮らす人たちに気づいてもらい、まちを誇りに感じる人が増えることで外から訪れた人たちにもその魅力が伝わる、それが自然な流れだと思っています。当社のサービスを通じて、ここに住む人も訪れた人も、静岡のまちが持つ「光」に気付いて頂くきっかけを提供したいと考えています。

音声ガイドはスマホを活用したデジタルサービスですが、その中でこだわっているのが「現場のリアル」というアナログを残すということです。
今、音声メディアをはじめとする音声サービスが増えつつありますが、当社は「場所と紐づく音声」を提供しています。観光地などを訪れた際に、その場に紐づくストーリーを知ることで、目にするものの価値や滞在価値は大きく高まります。「ここでしか聴けない音声」を提供することで場所の魅力を最大限伝えたいと考えています。一般的に音声ガイドは声優やナレーターといったプロによる演出で制作しますが、当社では地域に暮らす人の声や雑踏、駅のアナウンスといったそこにしかないリアルな音を大切にしています。

この4月には、GPSに連動して地域に暮らす住民自らがガイドをしてくれる観光音声サービス「おともたび」をリリースしました。コロナで人に会いづらくなった今だからこそ、地域の人のリアルな温かみを感じられるデジタルサービスが生まれました。リアルで飾らない魅力を伝えることで地元の人も観光に訪れた人もまちの良さを再発見したり、それをまた誰かに伝えたりと、人々を結び付ける接点や架け橋となるように取り組んでいます。

若者へのメッセージ

今、コロナウイルスの拡大や様々な天災による環境変化を受け、世の中の価値観が大きく変化しているタイミングだと感じます。「こうしていれば大丈夫」といった確実な正解がない時代、自分自身の中の「正しい」や「かっこいい」、「幸せ」という感覚にきちんと耳を傾け、信じて行動して欲しいと感じます。
これまで信じられていた、経済成長し続けることや大企業に就職することといった「正しさ」が、必ずしも自分の人生や社会にとっての正解でないと気づく人が増えています。これまでの当たり前や常識が変化する新しい時代において、生活スタイルやキャリアを含めて「自分が正しいと感じるものを自分で選びながら生きる」という強さや柔軟性が必要だと感じます。
今もし何か1つの価値観に捉われ、悩んだり辛い思いをしていたりする学生や社会人の方がいたら、転勤をきっかけに地方でチャレンジする楽しさを謳歌する私自身の生き方を1つのサンプルに、「社会はもっと多様な選択肢があるんだよ」という気付きの機会を提供できるといいなと思います。