株式会社JJイングリッシュ社 代表取締役

秋藤幸司

Koji Akifuji

どうせよくなる。どうせ大丈夫。     それが宇宙の法則。

秋藤幸司

略歴

立教大学文学部英米文学科卒業。
若林出版、宝島社、角川書店、講談社で編集者として勤務。
『関西大人のウォーカー』(角川書店)、『寅さん男はつらいよDVDマガジン』『山口百恵DVDマガジン』(共に講談社)などの編集長を歴任するかたわら、NHKでドラマ化された『悪童 ~小説 寅次郎の告白~』他、『闘うもやし』『モタさんの言葉』(全て講談社刊)等、実用・エンタメから政治まで、幅広いジャンルの単行本も多数担当。2019年7月より現職。

現在の仕事についた経緯

講談社で、『安河内哲也直伝!おもてなし純ジャパENGLISH』という英会話教材を担当しました。ヒットはしましたが、期間限定の雑誌形式の商材だったため販売は2年で打ち切るしかありませんでした。別の形にしての販売を講談社内でも模索したのですが、さまざまな制約があり断念することに。しかし、大手の英会話教室の社長さんや英語教育の大御所の先生から「こんな画期的な英語学習コンテンツをこのまま眠らせてはいけない」といった励ましの言葉をいただいている内に、だんだんとその気になってきまして。残念ながらどなたからもお金は出してもらえなかったのですが(笑)、講談社を始めとして多くの人の協力も得られましたので、一念発起、起業して「JJ ENGLISHエクササイズ」という教材に再編集して販売することにしたのです。
編集者としての使命感だったのかといわれると、半分はそうですが半分は、大げさではなく、ちょっとした「運命」を感じたというのが本音です。さしたる信念があって進んだわけでもない英米文学科という大学時代の専攻が突如30年後に意味を持ってきたのです。「もしかして、自分はこの仕事を始めるために生きてきたのかもしれない」そんな思いが胸をかすめるようになり、気がつくとその他の本の企画にまったく興味がなくなっていて(笑)。そして今の仕事に突き進むことに。人生は不思議ですね。

仕事へのこだわり

大学を卒業したのが1988年ですから、私は正真正銘の「バブル世代」です(笑)。マスコミに限らず大手有名企業に入ることが簡単に思えた時代なんですね。へそ曲がりで自信過剰だった私は「小さなところから成り上がってやる」と、小さな出版社に勤めたのですが、これがなかなか厳しかった(笑)。大手出版社の中途採用を受けるのですが書類段階でことごとく落ちる。それもそのはずで、当時は、大手が中途採用募集をしようものなら、別の大手や中堅会社からの希望者が殺到していたのですから。新卒時より遥かにハンデがある。「これはしくったな」と正直思いながら、それでも必死で仕事をしました。這い上がるためには、それくらいしか思い浮かばなかったのですね。ですから、新人時代の仕事のスタイルは「必死」。その一言に尽きますね(笑)。でも、その必死の3年間が私の編集者としての足腰を作ってくれたように思います。
大きな転機はJICC出版局(現・宝島社)への転職です。ある編集部への取材がきっかけで誘われる形で転職することができたのです。傲慢でも必死で生きる若者を天は見捨てなかった(笑)。当時の宝島は社員が50人もいるかいないかの小さなサブカルの出版社というイメージです。ただ、存在感はあった。いまは映画評論家として活躍されている町山智浩さんを始めとして、とても才能豊かな人と机を並べて仕事ができた。それは、とても大きな経験でしたね。一流の人の仕事の作法のようなものを肌身で感じることができたんです。
でも、いちばん大きかったのは、ある先輩編集者に言われた言葉です。その方は、写真集を作らせたら右に出る者はいないほど優秀で、当時、時代の寵児だったアラーキーこと荒木経惟さんとも懇意にされていたんです。ある時、私が『荒木さんの写真集を出せば売れるじゃないですか?』と何気なく言ったところ、躊躇なく返されました。『荒木さんの本は、俺が出さなくてもみんなが出す。でも、スターの陰に隠れて世に出ていない才能がたくさんある。彼らを世に出すのが俺の仕事だ』と言われたんです。いやー、ショックでしたね。同時に恥ずかしかった。それ以来、私はその言葉を自分の胸に刻んで仕事をするようにしました。たとえ、メジャーな方との仕事になったとしても、他の誰も見つけていないその人の魅力を引き出すとか、何か自分でしかできないことをやる。そういう意識をもって仕事をするように努めてきました。その意識は、今現在も継続実践しているつもりです。

若者へのメッセージ

人生を大いに楽しむこと。それがいちばん大切なのではないでしょうか。人生を楽しむとは、言い換えると、自分だけのオリジナルな幸福を追求するということです。他人や世間でいわれる一般的な幸福が自分の幸福とは限らない。世間で言われる幸福を求めて頑張ってみたけど全然幸福な気持ちがしない。私たちやその前の世代の人達の中には、そんな失敗をしている人がけっこういたりする(笑)。
どんなことでもいいと思うんです。仕事にかける生き方もある。趣味や家庭生活にそれを求める人もいる。とにかく、自分が幸せと感じる生き方を1つでも2つでも見つけ、深めていく。幸せの大きさも形も人それぞれ。1億2千万人の国には1億2千万個以上の幸せがある。そういう社会、なんだかいいと思いませんか。はい。自戒というか、自分の半生を顧みて、いまなんとなく私はそのように思っている次第です。