株式会社エクセルシア代表取締役社長

足立寛一

Kanichi Adachi

人のために火をともせば          我がまへあきらかなるがごとし

足立寛一

現在の仕事についた経緯

学生時代から海外への興味が強く、大学卒業後は、米国留学を検討していました。しかし、手掛ける会社を経営していた父が高齢になり、長期の資金調達が難しくなったことから、周囲に請われる形で1997年、25歳の時にダイオキシン分解技術の新規事業を手掛ける当社を設立、事業を引き継ぎつつ展開しました。
当初、当社の主事業は億単位のプラント設備を売るような、BtoBの大規模なものでしたが、私には当社の環境技術を、もっとエンドユーザーの身近で、役に立つものにできないかとの考えがありました。そこで新たに挑戦したのが、水が使えない場所でも使えるトイレ処理剤です。糞便を吸着、殺菌・消臭するタブレット状の処理剤『ほっ!トイレ』は、災害用として東日本大震災や熊本地震などの大災害時にお役に立てていただくことができました。
トイレが不足しがちなレジャー用としても普及しています。美しい景観を持つ世界の観光地は、人が集まれば集まるほど環境が悪化するジレンマを抱えています。2012年には、5年ごとに破棄される災害備蓄品の携帯トイレを観光地に無償で提供する事業を開始。富士山や長野ののりくら高原、海外ではモンゴル、ウガンダ、ボリビアのウユニ塩湖などにも提供されています。

仕事へのこだわりと今後の目標

日本において、私たちが享受している平和、医療、衛生などの価値は、世界を見渡してみると、決して当たり前に得られるものではありません。トイレもまた深刻な人類共通の問題です。トイレの処理を上下水道で行える国は決して多くはなく、世界の全人口の3人に1人、約20億人は清潔なトイレを使うことのできない生活を強いられています。

SDGsの6には「安全な水とトイレを世界中に」とあります。これはまさに当社の事業が目指すことに一致します。環境・防災・医療・福祉・人権すべてに関わるトイレ問題を解決に導くため、私たちの技術をより広く普及させ、持続可能な世界の実現に寄与していきたいと考えています。

営利企業として、利益を出すことは当然のことですが、人を幸せにする、社会をよりよくするという「ソーシャルビジネス」としての経営を、常に念頭に置いています。私利私欲だけでは、私自身も、誇りをもって仕事に打ち込むことはできません。世界中の親と子どもたちが、温かい笑顔を交わし、幸せな時間を過ごす姿を思い描くことが、強いモチベーションとなっています。

そして近年力を入れるのが医療分野。医療機関における排せつ関連の悪臭や共用トイレの便座やドアノブを介した院内感染の防止、内視鏡や手術中の廃液などの処理方法としても利用していただいています。

既存のトイレ製品を世界中に普及させることはもちろん、当社の技術を、世界が抱える課題の解決につなげる、新たな役割を模索していきたいと考えています。様々な構想を実現化し、さらに加速していくためには、志を同じくする企業やNPO、学術機関などとのアライアンスが必須です。技術やアイデア、志を持つ方々との「出会い」を大切にしていきたいと思っています。

若者へのメッセージ

最近強く感じるのは、私たちが日々出会う他者は、自分自身の合わせ鏡だということです。人間には誰でもよい部分、悪い部分があります。自分の悪い面を前に出して人に近づけば、相手の悪い面が反映され、負の価値を生む。自分の良い部分を相手に投げかければ、相手の良い部分が引き出され、すばらしい価値を生み出すことができます。すがすがしい気持ちで言葉と思いを交換して、昔話の『わらしべ長者』のように、価値をどんどん大きくしていきたいですね。

これから社会に出る若い方々も、打算的な「人脈」の作り方を考えるよりも、まず目の前の人に誠実に顔を合わせてみてください。そうすれば、ともに成長し、手を携え、将来的に大きな仕事を成し遂げられるような、大切な関係が作れると思います。