価値住宅株式会社 代表取締役

高橋正典

Masanori Takahashi

精神一到

高橋正典

現在の仕事についた経緯

正直に言うと、不動産屋になりたいとは全く思っていませんでした。
若い頃は「成功したい」というイメージだけはありましたが、具体的にどんな仕事をするのかは全然見えていませんでしたね。
ただ縁があって不動産業界に入り、良い上司との出会いがあり、この仕事が自分の人生を導くためのひとつの手段になったという感じです。
業界に入ってからは、小さな会社から大きな会社まで、中心となって仕事に取り組んできましたが、前職で会社の事業の方向性と自分の理想とする方向性が合わなくなってしまいました。
世界の住宅市場を見ると、特に欧米は中古住宅を長く丁寧に使う風潮があり、日本もそちらにシフトしつつあるのですが、やはり不動産業界では新築物件がまだまだ優勢で、会社としても「新築を作れば売れる」と考えるところが多くあります。
ただ僕は、値段の高い新築をわざわざ買って、住宅ローンの支払いに追われる人生が果たして幸せなのかという疑問を持っていました。
不動産業界が既存の住宅をきちんとした状態で、かつ、安価な価格で流通できれば、消費者は浮いたお金を自分のプライベートや余暇に回せるんじゃないかと。
そこで会社との溝を感じてしまったので、それなら自分の思う事業をしようと独立に至りました。

仕事へのこだわりと目標

初志貫徹の姿勢は大切にしています。
そもそも経営者になりたかったわけでもない僕がなぜ会社を興したのか言うと、自分の想いを貫きたかったから、なんですね。自分の想いさえ届けば、僕は雇われの身でも良かったわけです。
だからこそ、会社設立当時の志をないがしろにしてしまうと、今僕がやっていることの意味もなくなってしまうと考えています。
もちろん事業はお金を儲けないといけないので、さまざまなことの優先順位が入れ替わるときもありますが、基本的には「何のために会社を立ち上げた?」という点だけは絶対にブレさせないようにしています。
僕で言うと「住宅流通市場のこれからの形をきちんと作っていきたい」ということですね。

今後の目標としては、これから家を買う方に向けて、住宅に関する正しい知識を広めていきたいですね。
中古住宅市場が成熟している欧米では、購入される家の8割が中古なのですが、日本では8割が新築というまったく逆の状況になっています。
と言うのも、中古物件であってもちゃんとした検査や保険、保証があれば本当は安心して買えるのだという正しい知識を、日本の消費者側がほとんど持っていないからです。
すると、売る側も「バレないならいいか」ということで、プロとして行うべき施策を省いて売ってしまい、買う側も「騙された」ということで、中古住宅へのイメージがより悪くなる一方になります。
このループに終止符を打ち、日本の中古住宅市場を成長させるためには、消費者の不動産リテラシーを高めていくことが先決だと僕は考えています。
これまでに中古住宅や家の買い方についての本を何冊か書いてきましたが、これも、消費者の方に正しい知識を持ってほしいという気持ちから行ってきたことです。
若い世代の方は、新築の家にこだわらない方も徐々に増えてきていますから、これからも不動産のプロとして情報発信は続けていきたいですね。

若者へのメッセージ

弊社の若い社員によく言っているのは「上がりで生きるな」ということです。
今の若い世代の方はすごく賢いし、器用ですから、これまで受けてきた教育や、得てきた知識でそれなりの人生を生きられるイメージがあります。しかし今までの収穫高だけで生きていこうとすると、どこかで使い切ってしまうんじゃないかなと僕は思います。
そこで「なくなった!」と慌てても、残り時間がもうないということも多いですから、それはもったいないなと感じますね。だから学生時代にある程度積み上げてきた人でも、社会人になったら、さらに新たな「上がり」を増やせるよう、頑張ってほしいです。
それから若いうちは、自分の行動やビジョンをあまり決めてしまわない方が良いと思います。
自分の目標を作りたくなる気持ちもわかりますが、無理にやることを作ると、かえってその目標に縛られてしまうことがあるからです。
僕は38歳で会社を立ち上げるときに初めて「こうしたい」「こうすべき」という強い想いが見えて今に至りました。だから若いうちは焦らずにご縁を大事にして、その中でゆっくりと自分の形を作っていけば良いと思いますよ。